Vol. 9

自然と音楽に囲まれ
健やかに暮らす

上富良野町Kさん宅  家族構成/夫50代・妻40代、母

周囲の田園風景に溶け込むようなシックな佇まいの外観と造作カーポート。道南スギ板張りの外壁の塗装も、Kさんが時間をかけて選んだこだわりの色

 大学で声楽を学んだKさんは、本格的な音楽室を備えたマイホームを持つことが長年の願いでした。建設地は「転勤で3年間住んで、雄大な自然と温かな人のつながりに魅了された」という上富良野町。その夢をかなえるため、3年前から、知人のつてをたどって土地探しをしていました。
 「2年ほどかかりましたが、真正面に大好きな十勝岳を望む土地を購入できました。新築は、音楽室の施工経験があり、波長の合うアクト建築工房さんにお願いしました」。呼吸器系が弱いKさんは、調湿性のある漆喰や自然木をふんだんに使い、健康的な住環境を実現することも希望していました。
 2014年の夏に完成した住まいは、ワンフロアに居住空間をレイアウトしたバリアフリー仕様。「天井は可能な限り高く」というKさんの希望で、音楽室は屋根なりに3.5メートルの高さを確保したため、LDKの上には予備室、書斎として使えるロフトも設けることができました。ロフトやリビングから、晴れた日には十勝岳の勇壮な姿がたっぷりと望めます。「冬の夕暮れは格別の美しさです。また、眺望を確保するために大きく採った窓からは、外光がたっぷりと入り、冬も暖かく心地いいんですよ」と、Kさんは笑顔で話してくれました。
 まだ少し先の定年後、Kさんは奥さんと山歩きを日課に、また地域の愛好家、友人と演奏活動を楽しむ予定とか。「これからの趣味的な暮らしの拠点にふさわしい住まいを実現できて、心から満足しています」。

高い天井と大開口が伸びやかな空間をつくりだすリビング・ダイニング。ロフト下には、大容量の壁収納を造作。中央には仏壇も組み込まれている。テレビ上のスクリーンを下ろせば、シアタールームとしても活用できる

「新築を機に旭川で独り暮らしをしていた義母の部屋も用意しました。これから義母のために花壇と菜園をつくる予定です」とKさん

ロフトからLDKを見る。大きな壁収納と開口の上には、タモ材で造作した間接照明が設置され、夜には落ち着いたくつろぎ空間になる

リビングから階段で結ばれたロフト。大きな窓越しに十勝岳が楽しめるタモ材の造作カウンターはKさんのお気に入り。ロフトは来客時の予備室も兼ねる

Kさんのこだわりが詰まった音楽室。好みの音の響きを忠実に再現するため、既製のユニットではなくあえて造作にこだわった

テラコッタが敷かれた玄関にはシューズクローゼットのほか、土間造りの収納スペースを設置。山歩きの道具、アウトドア用品の手入れなどもできるよう、小さなシンクも取り付けられている

システムキッチンにミーレの食洗機を組み込んだ対面キッチン。背面には大理石カウンターのある造作収納もしつらえた

タモを用いた造作洗面は、掃除がしやすい人工大理石一体型ボウルを採用。水まわりの天井には抗菌作用があり、湿気にも強いヒバ材を採用。テラコッタの床には床暖房を備え、冬も足元から暖かい

リビングから延びる音楽室への廊下。田園風景の中を走る列車が見える窓辺は、奥さんのお気に入り。左手には寝室がある

■建築データ

構造規模/木造(新在来工法)・2階建て
延床面積/178.80㎡(約53坪)(カーポート含まず)
<主な外部仕上げ> 屋根/長尺カラートタン、外壁/道南スギ板張、建具/玄関ドア:木製断熱ドア、窓:樹脂サッシ(Low-E・アルゴンガス入)
<主な内部仕上げ> 床/ナラフローリング、壁・天井/漆喰塗
<断熱仕様 充填断熱+付加断熱> 基礎/ポリスチレンフォーム(B3)100㎜、壁/グラスウールサン16kg100㎜+グラスウールボード32kg45㎜、天井/ブローイング300㎜
<暖房方式> パネルヒーター・床暖房

■工事期間

平成25年12月〜平成26年6月(約7ヵ月)

Replan北海道vol.110掲載

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